☆アルツハイマー治療薬を使って歯を再生させることに成功!

虫歯の治療のため歯を削ると、通常、削った部分が完全に再生されないので人工の詰め物を入れることになります。しかし、キングス・カレッジ・ロンドンの研究者らによって発表された内容によると、アルツハイマーの治療薬を利用して、虫歯などによってダメージを受けた歯を再生させることに成功したとのことです。

 

「歯」は一見すると鉱物質の塊のようにも見えますが、実際には独自の生理機能を持っています。表面にある硬いエナメル質の下にある象牙質という部分は、エナメル質より柔らかく衝撃に強いという性質を持ち、歯の組織の大部分を占めています。象牙質は一度削られると完全に再生させることが難しいため、歯の治療では削られた部分に詰め物をして、その上にカバーをするのが一般的です。しかし、現在の治療で使われているセメントの詰め物は、歯を弱くすると考えられており、基本的にはもともと存在する象牙質を維持することが好まれます。

そこで、研究者らが目をつけたのが、アルツハイマーの治療で使われるTideglusibという薬。Tideglusibには「歯が成長する」という副作用があり、研究者らはTideglusibを使って象牙質を再生できるのでは?と考えたわけです。アルツハイマー治療において、Tideglusibはアルツハイマー型認知症の原因となる、異常のあるタウタンパク質に働きかけると考えられています。一方、歯の治療におけるTideglusibは歯の中心にある幹細胞に働きかけ、象牙芽細胞を成長させるトリガーとなります。

今回行われた実験はマウスを対象にしたもの。欠損のあるマウスの歯に、薬を浸したスポンジを詰めたところ、歯の再生を確認したとのこと。生物分解性のあるスポンジを使用し、数週間後にマウスの歯を確認するとスポンジはほとんど分解され、新しい歯に置き換わっていたそうです。今回の治療法が人間にも応用されるようになれば、人工の詰め物で歯が弱くなり将来的に虫歯にかかるリスクが高くなることもなく、健康な歯を取り戻すことが可能と考えられています。

この技術を人間に応用すべく、研究チームは現在、マウスより4倍ほど歯の穴が大きいラットで実験を行っているところ。実験が成功すれば、2017年内にも人間を対象とした臨床試験が行われる予定です。ただし、今回の方法は虫歯治療における「歯をドリルで削る」という作業をなくすものではないので、虫歯治療の恐怖が完全になくなるわけではないとのことです。(インターネットニュースより)