さぬきうどんをはじめ、麺類のおいしさは麺のこしにあるといわれています。では、どうやって、私たちはそれを感じているのでしょう。
食べ物のおいしさを味わうとき、味を区別するのは味覚という感覚ですが、歯ざわりというのもなかなか大切なものです。宇宙飛行士の食事も、最初はチューブに入ったペースト状にものでしたが、今は形のあるものに変わりましたね。これは、柔らかくて噛む必要のない歯ごたえのない食事では、食べた気がしないからでしょう。
歯ざわりとか歯ごたえという感覚は、歯の感覚と、咀嚼筋(噛むための筋肉)の感覚から成り立っていると考えられています。
まず、この場合の歯の感覚とは、むし歯になったとき、痛く感じる感覚とはまた別のものです。そして、歯の感覚は、歯の表面のエナメル質で感じるのではなく、歯の根の周りをおおっている歯根膜の、圧力を感じるセンサーで感じます。
また、咀嚼筋の感覚とは、顎を動かす筋肉の中にあるセンサー(筋紡錘)が感じる感覚のことです。筋肉の感覚はたいへん敏感です。たとえば階段を上っていて、高さの不ぞろいなところがあれば、目でみてもわかりにくいわずかな段差でも、すぐに歩く感じでわかりますね。それは足の筋肉の感覚が働いたからなのです。
うどんが歯に当たったことは、歯根膜のセンサーが知覚し、そのときの咀嚼筋にかかる力を、筋肉のセンサーで知覚します。それらの情報が大脳のコンピューターで総合的に判断されて、うどんのこしがわかると考えられています。
では全部歯がなくなった総入れ歯の人の場合はどうなるのでしょうか?。この場合、入れ歯を支える歯肉のセンサーが、歯根膜のセンサーの代わりをすると考えられていますが、感度がそうとう悪くなるようです。
食べ物のおいしさは、やはり歯が健康でなければわかりにくいのではないでしょうか。