なぜきちんと歯を磨けない人が多いのか?

歯周病で受診する患者さんの中には、ほとんど歯を磨いたことがなくて、歯周病になったのは当然の結果という人がいます。その一方で、「毎日歯を磨いていたのに……」と、歯周病になったことが納得できない人もいます。しかし、きちんと歯を磨いていると主張する患者さんの清掃状態を染め出し剤でチェックしてみると、真っ赤になるケースがほとんど。これはきちんとプラーク(歯垢)が落ちていない証拠、つまり磨き方が間違っているのです。

ブラッシングの最大の目的は、うがいでは取り除けないプラークを取り除くこと。歯科医師は「歯肉をマッサージするつもりで歯ブラシを当ててください」と指導することがありますが、これはマッサージが主な目的というわけではなく、歯と歯肉の両方に歯ブラシを当てるイメージを持ってもらいたいから。

日本人は一般的にどのようなブラッシングをしているのでしょうか。10~60代の全国の男女1200人に調査したところ、ブラッシングの頻度は、76%の人が1日に2回以上、1回あたりの歯を磨く平均時間は1~3分でした(「歯に関する調査(2015年)」ライフメディア リサーチバンク調べ)。

患者さんから「ブラッシングは毎食後にしたほうがいいんですよね?」と、よく聞かれます。毎食後ブラッシングができれば理想的ですが、1日3回短時間サッとやるよりも1日1回でいいからしっかり時間をかけて磨いたほうが歯周病には効果的です。

では、「ていねいなブラッシング」とは、どのようなブラッシングでしょうか? 実はこの「ていねい」のイメージは人によってかなり違いがあります。たとえば、3分間のブラッシングを「ていねいすぎる」と感じる人がいる一方で、「3分では短すぎて全然磨けていない」という人もいます。

わかりやすいように「時間」で示すなら、最低約10分が目安。長いと感じるかもしれませんが、一般に歯は全部で28本ですから、1本あたり20秒ほど。1本1本をていねいに磨くには、この程度の時間は必要です。

ただし、歯ブラシが磨くべきところにきちんと当たっていなければ、10分磨こうと20分磨こうと意味がありません。「正しく磨くこと」が大事です。

道具の基本は歯ブラシです。道具が増えると一つひとつがおろそかになりがちです。ましてやこれまで歯ブラシですらきっちりブラッシングができていない人は、まず歯ブラシを使いこなせるようにしていきましょう。

次に必要なのが、歯ブラシではとりづらい歯と歯の間のプラークをとる補助的な清掃器具です。すでに歯周病が進行して歯肉が下がってしまった人には、歯間ブラシが効果的。一方、子どもや歯肉が下がっていない健康な人は歯間ブラシを使うと歯肉を下げてしまうので、デンタルフロスが適しています。また、デンタルフロスの使用は、歯周病になっていない人にとって予防になりますから、子どもの頃から使い方に慣れておくことが大事です。奥歯など奥まった磨きにくい場所は、ワンタフトブラシが有効です。

歯ブラシ選びのコツを紹介します。

歯ブラシを選ぶときに重要なのは、「歯肉を傷つけることのないもの」「歯垢をしっかり落とせるもの」。具体的には次の5つをポイントに選んでください。

(1)ナイロン毛
(2)植毛が密なもの(3列が目安)
(3)毛の硬さはふつうか、やわらかめ
(4)ヘッドは小さめ(小回りが利き、奥歯にも届きやすい)
(5)柄はストレート

患者さんから質問されることが多いのは、「毛のやわらかさはどのくらいがいいですか?」ということ。やわらかすぎるものは歯や歯肉に当たると毛が寝てしまって、プラークを落とすことができません。逆に毛が硬すぎるものや毛先がとがっているものは、歯肉を傷つけてしまいます。大手生活用品メーカーが販売している一般的な歯ブラシの中から、まず「普通」と表示されている商品を選び、使ってみて痛いと感じたら、それよりもやわらかめのものに変えてください。
「自分にどれが合うのかわからない」という人は、歯科医院でブラッシング指導を受ける際に歯科医師や歯科衛生士に選んでもらいましょう。歯科医院で歯ブラシを購入することもできます。(インターネットより)