実はこの“ある部分”を若く保ち、元気な高齢者が多く暮らす県が日本にあるという。それは新潟県。番組では、新潟県に住む3人の高齢者のもとを訪れ、実際にどれだけ脳と足の機能が若いのか、医学的な検査を実施した。その結果、3人ともに脳・足の年齢は実年齢よりも10~20歳も若いという驚きの結果に。さらに3人は身体のある部分が丈夫だという事実も判明した。
そのある部分とは何と「歯」。実は高齢でも、歯が健康で丈夫であれば脳と足の機能を若々しく保つことができるということが、最近の研究でわかってきたのだ。実は3人の歯の健康賢者が住む新潟県は、全国で初めて歯の健康維持について条例で定めた県。給食後の小学校でも、昼休みの県庁でも、条例を守ってしっかりと歯磨き。この努力もあってか、新潟県は14年連続で12歳児の虫歯が少ない県1位となっている。また、毎年、80歳を超えても20本以上の歯を保っている高齢者を表彰するコンクールも開催されており、歯の健康賢者が続々と生まれているのだ。
■健康な歯を手に入れるポイントは咀嚼回数を増やすこと
では、歯をしっかり残すことと、脳と足の機能の若さにはどんな関係があるのか? 歯の健康と老化の関係について研究を続けてきた菊谷武先生(日本歯科大学教授 口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長)によると、健康な歯で食べ物をしっかり噛むことで、歯を支えている歯根膜と呼ばれる部分に刺激を与え、その刺激が口の周りにある三叉神経に伝わり、脳全体を活性化。前頭葉の血流量も増加し、認知機能が活性化すると考えられているという。一方、歯を失うと、歯を噛み合わせることで安定していた下あごがずれて不安定な状態に。すると目線が定まらなくなり、身体のバランスが崩れやすくなってしまう。その結果、歩行速度が遅くなるだけでなく、やがて歩くこと自体が少なくなり、筋肉量が次第に減少していくと考えられているのだ。
では、脳と足の機能を衰えさせない健康な歯を手に入れる秘訣はなんなのだろうか?それは、咀嚼回数を増やし、歯を守る唾液をより多く分泌させること。簡単に噛む回数が増え、唾液量をアップさせる方法を、咀嚼のスペシャリスト・柳沢幸江先生(和洋女子大学 健康栄養学類 教授)に伺ってみると、(1)しらすやたくあんなど噛みごたえのある食材を入れること (2)具材を大きめに切るなど食材にひと手間加えること (3)繊維に沿って縦に切り噛み切る繊維を長くするなど、野菜にひと手間加えること の3つ。手軽に実践できるこの方法で歯の健康を手に入れ、脳と足の若さを保とう。