高齢になって歯を失うと認知症や骨折を起こしやすいことが歯科医師らの大規模調査で分かった。義歯でも歯がないよりは予防効果がある。歯のない人はぜひ、義歯を入れ、健康的に過ごしたい。
記憶や判断力などに障害が起きる認知症の患者は約460万人。歯と認知症の関連を調べるため、山本龍生・神奈川歯科大教授らは愛知県内に住む65歳以上の高齢者4425人を対象に4年間追跡した国の研究班の調査結果を分析した。
その結果、歯がほとんど残っていない人(0〜9本で、義歯の使用なし)は、歯が20本以上残っている人に比べ、認知症の発症リスクが1・85倍も高かった。食べ物をかむ能力で見ると、あまりかめない人の発症リスクは、なんでもかめる人に比べ、1・25倍と高かった。
一方、歯がほとんどなくても義歯を使用している人の発症リスクは1・09倍と低く、義歯を使って、かむことがとても重要だと分かった。
「歯を失うとかむことが少なくなって、脳への刺激が減り、脳の機能が低下して認知症になりやすくなるのではないか」と山本さんは説明する。
さらに、対象者を絞って3年間追跡し、3年後に「過去1年間に2回以上、転倒したか」を尋ね、歯の本数と転倒との関連も調べた。歯が19本以下で義歯もない人は、歯が20本以上ある人に比べ、転倒するリスクが2・5倍と高くなることが分かった。
転倒と歯の関係については、若井建志・名古屋大教授らが日本の50歳以上の歯科医師9992人を平均6年間追跡した調査結果もある。追跡期間中、大腿骨を骨折した歯科医師は20人いた。歯の本数が0〜8本の人は、19〜28本の人に比べ、骨折リスクは約5倍も高かった。若井さんは「詳しい因果関係は分からないが、歯を失う人は骨自体が弱かったり、歯がなくなって体力が落ちたり、体のバランスが悪くなったりして、転びやすくなるのでは」と推定する。
歯は上下合わせて32本ある。国は80歳で20本を残す目標を掲げ、「8020」運動を展開している。
しかし、80歳で20本を達成している人の割合は過去より改善されているものの、約38%(11年、厚労省調べ)と少ない。70歳以上の歯の平均本数は、10〜15本程度なのが現実だ。
歯の数は、細菌などで炎症が起きて生じる歯周病になると減りやすい。歯を残すには歯周病の予防も必要だ。
厚労省の国民生活基礎調査によると、要介護の原因は脳卒中、認知症、転倒・骨折、関節の疾患が約6割を占める。こうした疾患の半分近くが歯の喪失と関係していると見る山本さんは「フッ素が含まれた歯磨き粉を使った歯磨き、歯と歯の間のブラッシングを毎日続けること。そして定期的にかかりつけ歯科医に歯を診てもらうことが大切だ」と歯を残すためのアドバイスをする。インターネットニュースより
*歯の専門家でもある歯科医師が歯を失っている現実があります(理由は様々だと思いますが・・・)私も実は奥歯がインプラント治療になっています。健康な歯がどれだけ体に関わっているかがわかる興味深い報告ですね(三嶋直之)