矯正歯科治療における歯の移動の新たなカギとなる細胞を解明?!

東京医科歯科大学は、中島友紀教授、森山啓司教授、庄司あゆみ氏らの研究グループが、東京大学の研究グループと共同研究で、歯科矯正学的な歯の移動に骨細胞が産生するRANKLが重要な役割を担うことを明らかにしたと発表した。

矯正歯科治療は、歯を目的の位置に動かすために矯正装置を用いて力を加え、歯の土台となる歯槽骨の再構築(歯槽骨リモデリング)によって歯を移動させる。つまり、同治療の成否は歯槽骨のリモデリングをいかに制御するかに依存するといえる。

現在、歯の移動を加速し治療期間を短縮するために、さまざまな新しい矯正装置や薬物の開発が試みられている。効果的な治療法を開発するためには、歯槽骨リモデリングの制御機構を解明することが重要だが、いまだ不明な点が多く残されている。

そこで研究グループは、古い骨や損傷した骨を吸収する細胞である「破骨細胞」の制御に注目した。破骨細胞の分化には破骨細胞分化促進因子と呼ばれるサイトカインが必須であることが知られているが、歯周組織ではどの細胞がRANKLの産生源であるかは不明であった。研究グループはこれを明らかにするために、新規細胞分画法を開発した。

興味深い発見として、歯周組織を構成する細胞集団の中で骨細胞がRANKLを高発現していることが見出された。そこで、骨細胞特異的なRANKL欠損マウスを作出し、歯科矯正学的な歯の移動モデルを用いて実験を行ったところ、圧迫側における破骨細胞数が減少し、歯の移動量が有意に低下することが明らかになった。さらに、RANKLを標的とした中和抗体OYC1を歯根周囲の歯槽骨に投与すると、歯の移動が有意に減少することも見出された。これらのことから、骨細胞の発現するRANKLが歯の移動に重要な役割を担っていることが明らかになった。

なお、同大学は、この研究の成果がより精密な歯の移動の制御を可能にし、今後の矯正歯科治療における骨細胞を標的とした新規治療法開発の分子基盤の確立につながることが期待されるとしている。(インターネットより)